「戒厳令」コスタ=ガブラス監督

「8月 南米では真冬である」1970年ウルグアイ、政情は不安定、戒厳令下の映像にこの文字が掲示され映画は始まる。冒頭、戒厳令下の捜査陣がアメリカ政府系機関に属するアメリカ人の死体を発見、犯行は左翼系反政府組織による。大使館員でもなかったこのアメリカ人(イブ・モンタン)が、何故誘拐され、処刑されなければならなかったのか?このアメリカ人はこの地で何をしていたのか?冬の時代の到来を告げる一週間の物語。
暑い季節に熱い映画ということで、がんばって鑑賞。昔、大毎地下の名画鑑賞会(だったと思う、隣のビルのロフトハウスみたいな所で)で見たと記憶する。確か同監督の「Z」もここだった。DVDの発売を知った時、今購入せねば、こんなのの再発はありえない、とばかりに「Z」ともども即購入(実は不覚にも「告白」を買い逃している)。それが2年ほど前ですか、ずっと見ずにいたわけです。単純なもので、巷はアテネオリンピックで何かと騒がしい、ギリシャときて思い浮かんだのが、アンゲロプロスとコスタ=ガブラス。今の精神状態では、至高の「旅芸人の記録」も安眠グッズとなるのみ、「Z」はNHKの教育テレビとかでやったりしてましたので、ここは久々に「戒厳令」を見ようと、眠気を誘う度はこちらの方が緩いはず。あらためて見ると、映像的には全く古さを感じさせないし、ミキス・テオドラキスの音楽もむしろ今風、描かれている内容も全く色褪せていず、おいおい今も同じことアテネの先でやってるよ、となります。冷戦終結で敵を亡くした大国も、イデオロギーから訳のわからぬ道理に矛先を変えたってとこで、きっとそんな既得権益を持つ輩がウジャウジャいてて、紛争を継続してるわけやな。撮影はアジェンデ政権下のチリで行われたそう、同監督が後にアジェンデ政権下の軍事クーデターを題材とした「ミッシング」を撮るっていうのも皮肉な話。日本未公開の近作「アーメン」ですが、DVDでもいいから発売してもらいたいもんだ。もちろん、「ミュージック・ボックス」とか「ミッシング」、「背信の日々」とかもね。