レディ・ジョーカー

昨日から公開されていたので、三宮の上映館に赴く。予想通りといってはなんだが、休日であるにもかかわらず客の入りはお寒いもの。大ベストセラー小説なるも、一般客の蝕手を動かすのは難しいところか。
というか、あの膨大な量の原作を2時間ちょいの映像で描いてしまうこと自体どだい無茶な話。必然、いかなる手法で見せてもらえるのかな、ってあたりが興味の焦点となる。
でも、この映画、不思議とジョーカーをひいた気にはさせられなかった。
よくあるように、原作のダイジェスト的な映像を連ねることに終始する映画となってはつまらない。そういう意味では、上手く映像に置き換えているものの、やはり一度原作を読んでいないと、映像のみでは説明されないことが多く、細かな部分はおそらくは理解できないはず。
原作通り被差別者の視点をストーリーに盛り込むことは、おそらく制作側として避けたかったのではと想像する。この困難な部分を押えているのには感心させられる。安易に省くと、犯行グループが事を起こすに至る動機、情念といったものは薄っぺらになってしまうだろうから。
映画では、犯行グループ、強迫される企業、警察の三者の視点からそれぞれの功罪を描いていくわけだが、原作にはこれに加えて、取材にあたるマスコミからの視点もあったはず。
犯行グループ、総会屋と企業の関係にせまる大新聞のデスクが小説途中から姿を消し、合田刑事の義兄である検察官が取り乱すあたりの描写は読んでいて呆然とさせられる印象的なエピソードだったのだが。
犯行グループの主犯を演じる渡哲也をはじめとして、出演している俳優さん、皆さん良いです。ただ、合田刑事役の俳優は、若すぎますね。吉川晃司が好演している分、対等に渡り合う役どころなので、何とももの足りない。