日本沈没/小松左京

日本沈没〈上〉 (光文社文庫) 日本沈没〈下〉 (光文社文庫)
最初に読んだのはほんのガキの頃。なるほど、こういう話であったかと、今更ながらに理解した箇所が多数あり。表紙の絵も当時のカッパ・ノヴェルズのものと同じ。文庫本の奥付を見てみますと、先の大震災からさほど時をおかずして復刊され、その後版を重ねている模様。うーん、なんだか節操がないというか。
今日、阪神大震災という現実を経てこのシミュレーション小説を読み返してみますと、都市が瓦解する情景の数々が細部に至るまで恐ろしくリアルな映像として伝わってきます。三十数年前、地震による破壊のメカニズムの一端を垣間見せた先見性はさすが、正統SF作家の真骨頂ってとこでしょうか。
政治、民族、国家等のいずれの事柄に関しても、現在の情勢と照らし合わせつつ、尽きることのない興味を喚起され、最後まで面白く読み通すこととなりました。
終盤、渡老人が今際の際に発した自らの出自に当惑させられたり。そう、日本人って単一の民族ではないのだ、とあらためて思い至る。あたしゃ、そんな風に解釈するけどね。