ロシア軍 殺戮指令

ロシア軍 殺戮指令〈下〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)ロシア軍 殺戮指令〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)
この邦題、何ともけったいでなんだかなと、そのまま手に取るのを躊躇させるんですが、中々どうして結構いけてましてね、この手のものでは久々の面白しろ本でありました。
新たなテロを計画を進めるアルカイダ。ロシアの軍事情報局に拉致され、拷問の末、惨殺されるイギリス大使館の三等書記官。引退したはずのブラックバードが新生ロシアの領土を横断飛行するも、その航路に主要な軍事施設はない。
一見、何の脈絡もなさそうな事象を突き詰めていくと、共産ロシアの残党が画策する壮大な世界転覆計画に繋がっていく。ここまでが、上巻。
後半、主人公はSASの手を借り、差し迫った謀略の進行を阻止してまわりますが、このあたりは通勤・営業の移動車中にあって、ワクワクしながら読み進めることとなった。事情が許せば、一気読みが好ましいところ。
携帯電話やインターネットなど、今日的なアイテムが効果的に利用されていて、冷戦華やかりし時期とは大違い、スパイ小説も変わったものだ、と隔世の感を抱いたり。また、昨今、この手のジャンルにありがちな、主人公の感情を情熱的に叙述するようなこともなく、むしろ淡々と独白するように綴る姿勢に好感が持てます。純英国産の仕上がりですわね。
次回作に期待大。