下山事件(シモヤマ・ケース)/森 達也

下山事件(シモヤマ・ケース) (新潮文庫)
宇都宮にての営業は夕刻より。先だっては大幅な延着を経験したこともあり、東京へ赴くにあたって、本日ばかりは余裕を持って大阪を出立する。そんな往きの車中にて本書を読了。
東京駅から上野へ、常磐線に乗り換え北千住まで。東武線に乗り換えるところで、そういえば今より通過するであろう、この先のJR線と交差するあたりの線路上が事件現場であることに思い至る。
読み始めて気がついたのだが、著者は彼のオウムのドキュメンタリー映画を撮った人だと、ならばたかじんの番組にでてたのを見たことがある。ここから、新たに判明する事実の断片をつむぎ、真相に迫ろうと模索する一人称の「僕」は顔を持ち、テレビで知り得たその容豹とキャラクターを思い浮かべながら読み進めることとなった。
著者自らの日常と共同で取材を行う面々との衝突、軋轢をも詳述する様は、同じ題材をあつかう清張さんの「日本の黒い霧」中の一編とはそのアプローチが大きく異なるものの、今日の視点を交えることで、遠い過去の事象が、しっくりと受け入れられたりもする。
面白かった。本書の取材に派生する先の一冊、後の一冊についても是非とも目を通したいと思う。