血まみれの鷲

血まみれの鷲 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
とかく国力が弱まったりすると、大昔の絵空事にすがりつくけったいな輩が、やたら出没する。そんな事情については、辛くも頷けるところがあるものの、ここではヴァイキングが徘徊していた世に想いを馳せようというのだから、いささか気が遠くなるのである。神話や伝説に自己のアイデンティティーを託すって心情は如何なるものなのかね。
猟奇的連続殺人鬼を追うドイツはハンブルグ州警察のお話なのだが、事件解明の課程において、様々の事柄を紐解かねばならず、内容は盛りだくさん。ドイツ・西欧の歴史から民族間の確執、宗教、新興の犯罪組織などなど、面白し。本書のページ数は600を超す、分厚いのだ。