聖骸布血盟/フリア・ナバロ

聖骸布血盟 下巻 (ランダムハウス講談社文庫) 聖骸布血盟 上巻 (ランダムハウス講談社文庫)
こうもハズレが続くと、なんか不安になってくる。
かつてラドラムの「暗殺者」やル・カレのスマイリー三部作で経験したような読後の充足感をもたらす小説(ロマン)には、この先遭遇することはないのだろうか。
事件捜査の進展に主題となる聖骸布の歴史を交えつつ、暗躍する秘密結社の謎に迫る筋立て、着想自体は悪くない。上巻を読み終えた時点では、西洋系伝奇小説として、これは期待できそうと思わせる。しかして、下巻終盤の大円団に至っては欲求不満がつのるばかり。
もともと、聖骸布といってもようわかりませんしね。個人的なキリスト像って、映画「キング・オブ・キングス」、「偉大な生涯の物語」、「ベン・ハー」に描かれる姿で完結している(どれもそれなりに感動したが)。
「我々はどこにでもいる」タイプの秘密結社は、ラドラムがやり尽くした感があり、なんだかな。敵役の有り様も斬新な新機軸が必要ですな。
ともすればやるせない気分に占められる昨今、空いた時間を活字に逃避させてくれるくらいには、読ませる内容であったと。