いまどきの「常識」/香山リカ

いまどきの「常識」 (岩波新書)
一読、この書物の内容をどうとらえれば適当なのだろう?先の世代からすれば、首をかしげたくなるような、昨今隆盛の事象群を題材にした評論とすればよいのだろうけれど、迷うことしきり。
著者は従来の価値観と照らし合わせることで、一貫して新常識のあり方に疑問符を投げかける。解は全く示していないのである。おそらくは、その疑問符の羅列こそが、本書の主題なのであろう。
当世、剣呑な空気が次第に広まっていくのを肌身にひしひしと感じつつ本書を紐解くと、もう折り返すことができないところまで来ているのかな、などと不安な気分に占められる。本書で綴られる新常識を形成する助けとなったものが、竹中さんを旗頭に現政権が推し進める市場原理主義政策の所産なのだとすれば、年を経るごとに保守へ傾き、硬直化していった我が世代の思考にこそ問題あり?自ら、生活を逼迫させているのかも知れない。