ノモンハンの夏/半藤 一利

ノモンハンの夏 (文春文庫)
初出時の単行本では、中途で投げ出してしまった。何を思ったか、この度は新たに文庫本を入手し、はたまた読了に挑む。
当時を知る上で不可欠な、ヒットラースターリンの駆け引きを中心とした欧州の情勢を交えつつ、広東軍、陸軍参謀本部、内閣やらの動向をもとに、かの有名な負け戦の詳細を描出しています。圧巻、面白すぎ。
蒙ソ軍、広東軍とも数多の凄絶な死に様をもって綴られる厳粛なドラマにあって、著者が絶対悪とする辻政信をはじめとした軍参謀らに向けた、自らの私情も多分に交えた批判の言葉が随所にちりばめられているのが、ユーモラスに感じられ、思わず吹き出してしましそうになること度々。
読み進むにつれ、次第に昭和天皇が気の毒に思えてくるから不思議なもの。敗戦に学ぶことなく、慢心と非科学的な精神主義のもと、法と人命をないがしろに続く戦争に一路邁進、国民もこれを支持し、支えていたというのだから愚かしいことこの上なし。